明導寺さんは昨年、仏教伝道協会主催の掲示板大賞において見事「仏教伝道協会大賞」を受賞されました。
明導寺藤岡住職の解説と共に9月下旬の掲示板の言葉をご覧ください。
<明導寺 9月下旬 掲示板の言葉>
誰が風を見たでしょう。 僕もあなたも見やしない。
けれど木の葉を顫わせて 風は通りぬけてゆく。
【「風」 クリスティナ・ロゼッティ(イギリス・詩人)】
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、秋の到来を感じさせる季節となりました。
山々に囲まれている人吉球磨地方では、盆地特有の朝霧が発生する中、
お墓や納骨堂に出向かれ、手を合わせていらっしゃる方々を目にします。
また、道路沿いや田んぼの畦には赤を中心に、色とりどりの彼岸花が例年よりも早く咲き誇り、秋風に揺れる様子を見ると、お彼岸の到来を告げてくれているようです。
先日「永代経法要」にお越し頂いた先生が、恩師である浅井成海先生のことを紹介されながら、浅井先生の著書『いのち華やぐ-こころの巻頭言集-』の一節をご紹介くださいました。
その書籍を読ませて頂くと、浅井先生は若かりし頃、風邪をこじらせて肺結核の病気を患われ、家族と離れてひたすらベッドに横たわる1年10ヶ月の入院生活を送られた失意の中、病室から秋になると見える可憐な庭一面のコスモスに随分励まされたと記されています。
そのことを、著書の中で
この療養生活で多くの人々のあたたかさを知り、草花の命のいとなみに心うたれました。いろいろな恵みの中にある自分に気づかせて頂きました。コスモスはメキシコが故郷で、日本には明治のはじめに伝えられたということです。花の本には、別名は、「秋桜」で「風を見る花」という愛称があると書いてあります。私は風に揺れるコスモスの情景を忘れることができません。
と述懐されており、読ませて頂いたこの文章に深い感銘を受けました。
コスモスが秋に美しく咲き誇ることから「秋桜」と書くことは広く周知されていますが、
「風を見る花」という愛称があることは、あまり知られていないように感じます。
しかし、他の花と比べて背が高く茎が細いコスモスは、風になびく姿が容易に想像でき、その愛称がそのままコスモスの特徴を表しているようで妙に納得しました。
私たちは「風」そのものを目で見ることはできません。
しかし、「風」に吹かれて揺れ動くコスモスを通じて「風」の存在を知らされるように、手を合わせる姿、お念仏を称える声を通じて、仏さまのおはたらきを頂くのです。
浅井先生は長きにわたる入院生活で、週2回の注射以外はひたすら病室のベッドに横臥し、3ヶ月に一度のレントゲンの結果を待つという日々に疲弊していかれました。
しかし、美しく可憐な色とりどりのコスモスが風に揺られる光景を眺めながら、
自分自身が仏さまの大きなおはたらきの中にあることを味わうご縁とされ、
お念仏とともにその苦境を乗り越えていかれたのでしょう。
私がいかなる困難な状況にあろうとも、そんな私を照らし、包み、育んでくださる確かな仏さまのおはたらきを私自身が味わい噛みしめながら、ご先祖に思いを寄せ、仏さまに手を合わせつつお彼岸を大切に過ごしたいと思います。