明導寺さんは昨年、仏教伝道協会主催の掲示板大賞において見事「仏教伝道協会大賞」を受賞されました。
明導寺藤岡住職の解説と共に5月下旬の掲示板の言葉をご覧ください。
<明導寺 2021年 5月下旬 掲示板の言葉>
悪いことばかりじゃない
コロナ禍で学んだ 思いやりの大切さ 【『人生にエールを。』リベラル社】
昨年の明導寺掲示板「コロナよりも 怖いのは 人間だった」を掲載して頂いたご縁で、
先日、名古屋市にある出版社「リベラル社」さんから書籍を送付して頂きました。
様々な視点からコロナ禍の現状に鋭く切り込んだ興味深い一冊で、
さらに厳しさを増す現状を鑑み、今回は本文に掲載されていた言葉を書かせて頂きました。
誰もが想像できなかった一年以上続く「コロナ禍」により、生活スタイルが一変し、
全く終わりが見えず、経済的にも苦境に立たされ気持ちの余裕がないことから、
身近な方を厳しい口調で否定したり、卑下するような言動が目立ち始めました。
ウイルスそのものよりも、嫌悪・差別・偏見などの問題が浮き彫りになり、
ギスギスした雰囲気の中で、苦しみや憎しみの連鎖に歯止めが掛からない状況となっています。
そのような中、今月初旬、息子たちが通う高校の体育大会が無観客で開催され、
保護者限定のYouTube生配信でその様子を見ることができました。
専門職や保護者の方ではなく、放送部の生徒たちが撮影を担当し、
臨場感あふれる在校生の見事な実況も加わり、見応え十分の内容で楽しませてもらいました。
その中でも、最高潮の盛り上がりを見せたのが「団対抗リレー」。
陸上部であろう健脚自慢のアスリートが抜きつ抜かれつの好勝負を展開し、
タッチの差で1位・2位の走者がゴールテープを切った後、
少し間を置いて、最下位のランナーが悔しそうにゴールラインを跨ぎました。
しかし、その瞬間に「お疲れ様です!」という力強い実況が空に響き渡り、
静寂に陥っていたグラウンド全体が最終走者を讃える拍手に包まれ、
ランナーの険しかった表情が緩んだように見えました。
おそらく、「悔しい」という事実は変わりませんが、「お疲れ様です!」の「ひと言」が、
懸命に走ったことに対する「共感」や「賞賛」と感じ得たのでしょう。
私自身も、思いが込められたその「ひと言」に何とも言えない爽快感と感動を覚えました。
さて、私たちの根本のお経である『佛説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』の中に、
仏教で大切にしている「和顔愛語(わげんあいご)」という言葉を用いて
やわらかな笑顔(和顔)で愛情が込められた優しい言葉(愛語)を使い、
相手のこころを汲み取ってよく受け入れる
と記されている一文があり、「思いやり」の大切さが説かれています。
仏教で大切にされる「相手を思いやる気持ち」が込められた言葉だからこそ、
全力で駆け抜けた高校生への「お疲れ様です!」の一言が心に響いたのでしょう。
本当に厳しい境遇にある今、慎重に冷静に物事を受け止めた上で、
誰もが抱えている「苦しみ」や「つらさ」に寄り添う「思いやり」の心を大切にしながら
コロナ収束の瞬間を待ちたいと思います。