2月上旬の掲示板より

明導寺さんは一昨年、仏教伝道協会主催の掲示板大賞において見事「仏教伝道協会大賞」を受賞されました。

明導寺藤岡住職の解説と共に2月上旬の掲示板の言葉をご覧ください。

<明導寺 2月上旬 掲示板の言葉>

真似をするときには その形ではなく

その心を 真似するのがよい。  【 渋沢栄一 】   

予想を上回るオミクロン株の急拡大により、ステイホームの日々を過ごす中で

外食を控える方も多く、テイクアウトの需要が増していますが、お店を利用する際、コロナ禍以前から少し気になっていることがあります。

例えば「お弁当」を購入する場合、財布の中の小銭では不足するので千円札を出すとします。

その際、店員さんにお釣りの返却があるので「千円、お預かり致します」と言われるのは理解できるのですが、450円のお弁当をお値段ちょうどの小銭を出して購入する場合でも、店員さんに「450円お預かり致します」と言われると、「『預かる』ではなく、『頂きます』『頂戴します』じゃないのかな?」と疑問が湧出するのです。

このように、丁寧なようで、何故か腑に落ちない「接客フレーズ」は、アメリカ型のサービス産業が日本に上陸し、「マニュアル」が持て囃されたことに起因すると考えられていますが、そこには「心」がなく、マスクで表情が汲み取れないことも加わり、その言葉は「形」だけだと受け取られてしまい、妙に言葉が上滑りしているように思えるのです。

私自身の受け取り方に問題があることは紛れもない事実ですが、何よりも「心」を大事にしてきた伝統文化が失われているように感じます。

さて、今回の掲示板は、徳川最後の将軍・徳川慶喜が心を許した数少ない人物のひとりで、令和6年に改定され1万円札の「顔」となる渋沢栄一さんの言葉を書かせて頂きました。

第一国立銀行(現みずほ銀行)・王子製紙・大日本印刷・キリン・サッポロ・日本経済新聞など約500社の設立に関わり「日本資本主義の父」と言われた方の言葉には重みがあり、マニュアルに支配されている今の時代だからこそ、さらに輝きを増しているように思えます。

お葬式の仏前勤行で読まれる『帰三宝偈(きさんぽうげ)』というお経の中に、

「学仏大悲心(がくぶつだいひしん)」というご文が出てきます。私なりに意訳すると、「仏教を学ぶということは、仏さまの大いなるお慈悲のお心を学ぶということであり、頭で理解したり、形だけに捕らわれるのではなく、仏さまのあたたかなお慈悲のはたらきを心で感じ、その真似をしながら人生を歩んでいきましょう。」と頂いています。

渋沢栄一さんの長女・歌子さん(当時6歳)が後年書かれた『はゝその落葉』の中で、

 我家は常慶町の松江山教覺寺と云ふ寺の客殿を借りて移り住むことになつた。ここは眞宗で、妻子もあり家族が多かつたので、寺とは云つても淋しいとも思わなかつた。

と、明治の初めに一家で教覚寺さま(静岡市)に寄宿されていたことが記されています。

教覚寺さまには、「令和二年七月豪雨」の発災以降、きくらげ・コーヒー・漬物・製菓など、人吉・球磨「復興支援商品」の販売会をこれまで7度も実施して頂いています。

単なる支援の「形」ではなく、ご支援頂く中に込められたお慈悲の「心」を受け取らせて頂き、私たちも、その「心」を伝え広めながら復興への道を歩んで参りたいと思います。

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