明導寺さんは昨年、仏教伝道協会主催の掲示板大賞において見事「仏教伝道協会大賞」を受賞されました。
明導寺藤岡住職の解説と共に10月下旬の掲示板の言葉をご覧ください。
<明導寺 2021年 10月下旬 掲示板の言葉>
比べるから 争いが起きる
【 ヱスビー食品 「濃いシチュー」 CM 】
例年になく、日中は残暑の日々が続きますが、10月も半ばを過ぎ、テレビのCMは「鍋」や「シチュー」など冬バージョンにシフトしてきました。
今回は、何気なく見ていたCMに登場する俳優さん二人のやりとりを書かせて頂きました。
シチューを連想させるニットを着た俳優さんおふたりが、自分の好みのシチューを食べながら
(西島さん)「やっぱ、クリームの方がうまいよなー」
(伊藤さん)「いやいや、ビーフの方がうまいっすよー」
(西島さん)「ほら!そうやって何でも比べたがる。」
(伊藤さん)「えっ!?」
(西島さん)「比べるから争いが起きる。」
という内容です。最後には「どちらも美味しい」と結論づけて終わるのですが、西島さんの「比べるから争いが起きる」という言葉に強く共感しました。
私たちは普段の生活の中で、無意識のうちに常に比較しながら生きています。
例えば、10月中旬になっても30度を超す残暑に「今年はいつまでも暑い」や
ドラフト会議の結果を受けて「はずれクジばかりで、去年の方がよかった」など
あらゆる事象や人物などを比較し優劣をつけ、自分や他人を卑下し愚痴を並べていくのです。
今、目の前にある現実を受け止め、受け入れることが大切であるにもかかわらず、自分自身の思い描いた「理想」と目の前にある「現実」を比べることで
新たな「苦しみ」の感情を生み出し、自分で自分を苦しめているのです。
先日、『お寺の掲示板 諸法無我』(新潮社)を読ませて頂きました。
38の掲示板の言葉と解説文が掲載されている大変興味深い内容でしたが、
その中に「隣のレジは早い」と書かれた延立寺さん(東京都)の掲示板が紹介されていました。
この言葉の解説の中で、著者である江田智昭さんは以下のように記されています。
隣のレジに並んでいた人たちが支払いを終え、買い物を済ませているのに、あなたは列に並んでいる。あなたはどのような気持ちになりますか。
大半の人は損をしたようなネガティブな気持ちに陥ったり、イライラしたりすると思うのですが、もし、隣にもう一つのレジが存在しなければ、おそらく何も思わず順番を待ち、普通に買い物を済ませたことでしょう。
以前、「他人と比べると不幸が始まる」という言葉が、あるお寺の掲示板に出ていたのを見かけたことがあります。これは俳優の藤村俊二さんの言葉だそうです。結局、他人と比較することを通して苦しみが発生してしまうのです。
比べることにより新たな「苦しみ」が作り出され、悶々と過ごしている私たち。
そのような私たちに、お経『ダンマパダ』の中でお釈迦さまはお示し下さっています。
他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。
ただ自分のしたことと、しなかったことだけを見よ
この言葉を深く味わいながら、自分自身を見つめて行きたいと思います。