明導寺さんは昨年、仏教伝道協会主催の掲示板大賞において見事「仏教伝道協会大賞」を受賞されました。
明導寺藤岡住職の解説と共に6月下旬の掲示板の言葉をご覧ください。
<明導寺 2021年 6月下旬 掲示板の言葉>
ぜーんぶ ひっくるめて お前なんだ
いいんだ それで 【漫画『バガボンド』 沢庵宗彭】
依然として「コロナ禍」からの脱出は見えてきませんが、「中止」一辺倒の昨年とは違い、今年は、感染症対策を行いながら、「インカレ」や「高校総体」などの大会が行われています。
伝統校のプレッシャーを撥ね除け「連覇」を果たした歓喜の表情や、
新たな歴史を刻んだ「優勝」に涙を流しながら余韻に浸る光景などを目にすると、多難な中にもかかわらず、大会を開催して頂いた方々への感謝の思いが沸き上がってきます。
しかし、出場できた喜びを感じながらも、思うような結果が得られず悔やんでいる選手や、大所帯の名門校ともなると、出場すら叶わなかった生徒も多いことでしょう。
青春を懸けてきた「ビッグイベント」が行われたことにより、
昨年は味わえなかった「苦しみ」や「悔しさ」を作り出していることも事実です。
さて、今回は、小説『宮本武蔵』を原作とした『バガボンド』(作画 井上雄彦)に登場する臨済宗の僧侶・沢庵宗彭(たくあんそうほう)の言葉を抜粋させて頂きました。
お漬物の「たくあん」は、実在したこの禅僧の名前を基に名付けられたという説もあり、要所で登場しては、武蔵のことを気にかけ道を説いていきます。
幼い頃から母親の愛情を知らずに育ち、父親にはいのちを狙われ、
さらに、村人からは鬼の子どもと揶揄される絶望の淵にあった武蔵に対して
剣の道を志し 修羅の如く 己を追い込んでいくのも武蔵
おつうの夢ばかり見て 悶々としているのも武蔵
ワシにイタズラするのも武蔵
ぜーんぶ ひっくるめての お前なんだ いいんだ それで
認めてしまえ ありのままのお前を 修行はそこからだ
沢庵からのこの言葉をきっかけに、自分のことを認めてくれる存在を知り、
そこから生きる意味を見いだし、天下無双を目指す旅へと歩みを進めたのです。
私たちが毎日読ませて頂く『正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)』の中に
大悲無倦常照我(だいひ むけん じょうしょうが)
という御文があり、「私を救おうとしてくださる広大な仏さまのお慈悲は、
怠ることなくこの私に向けられているのです」と意訳することができます。
「結果を出せなかった自分は駄目だ」と苦悶しながら過ごす日々がある私たちが、あらゆるものを照らし育んでくださる仏さまの確かなはたらきを受け止めさせて頂いたとき、思い通りに行かない人生であっても、大きな安心の中に一歩を踏み出すことができるのです。
甘いものに、一振りのしょっぱい塩を加えることで甘みがさらに引き立つように、その苦しく悔しい経験で流した汗と涙が、いつしか人生の糧となっていくのです。